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奇経と仙骨

奇経と仙骨

FT塾講師  神林 一隆

今年は例年に比べ、奇経の患者さんが多かったです。
内因と外因が混在し、体の情報が混乱した状態になると治癒機能が低下してしまう可能性があります。

今回、奇経治療仙骨の治療をペアで行なう事により、体の治癒機能が向上したのでご報告いたします。

診断

1) 経別脈診

左右の経別脈診部にFTを行ない、男性は左手女性は右手の、(小田式)奇経診断部位Ⅰ大陵と内関の中間点)か、(高橋式)奇経診断部位ⅡABラインとCDラインの心包経の中間点)のどちらかがstになる。

2) 腹診の奇経診断部

A      →督脈・陽蹻脈の診断部
B₁・B₂ →衝脈・陰維脈  〃
C₁・C₂ →帯脈・陽維脈  〃
D      →任脈・陰蹻脈  〃

腹診の奇経診断部

3) 音素診

腹診部の臍の前10~15㎝上部で拳を握り、「ズー」という音素でstになる。

4) 八総穴診

八総穴にS1のセンサーでFTを行なって比較してstの強いツボを探す。

治療

自分としては、奇経診断部ⅠとⅡの診断によって、治療を変える事はしていません。
Ⅰ、Ⅱのどちらかにstが出た時は奇経の証と考えます。

治療方法

左右の診断

居髎辺りや、雲門中府辺りをFTしてstが強い側を取穴する。
但し、帯脈だけは健側を取穴します。

治療法の選択

IP治療焼鍼治療異種金属による治療銀鍼による治療を使い分けています。

・メインとなる経穴が、手掌側でstになる場合

軽く接触した時に、stがある場合、比較的体表に近い所に病邪があると考え、銀鍼の一番で補瀉治療を行ないます。
 
「補の治療」

流注に沿って、鍼を0.5㎜~1㎜程刺入し、押手に気を感じたら鍼口を閉じながら素早く抜鍼する。

「瀉の治療」

流注に逆らって2~3㎜刺入し、軽く雀啄し、押手に邪を感じたら、鍼口を閉じず、皮膚面を圧迫しながらゆっくり抜鍼する。

・メインとなる経穴が、表面ではsmだが、圧迫するとstになる場合
 又は圧痛がある場合は、鍼によるIP治療を行なう。

IPコードを結線した後は、四海付近はしっかりsmになっている事を確認して下さい。

・メインになる経穴が、手背でstになる場合

焼鍼による補瀉治療をします。補の経穴はチョンと一回瀉の経穴はチョンチョンと2回行ないます。

・効果の確認は、治療前と治療後に各加重穴のstを確認します。

加重穴

督脈-陽蹻脈→下脘穴
任脈-陰蹻脈→気海穴
衝脈-陰維脈→大横穴
帯脈-陽維脈→帯脈穴

八総穴はそれ程stでなく、加重穴にstが強く出ている場合は異種金属を使用すると調整されやすいように思います。
銅とアルミニウムによる補瀉治療を行なう。治療後は、全ての荷重穴がsmになっている事を確認します。

仙骨について

仙骨は骨盤輪の後方に位置する腸骨に挟まれた鉤状の骨で、5つの椎骨が(S1~S5)が膨張して癒合した骨である。

 仙骨からは副交感神経が出ていて、(他の脊椎は交感神経支配)リラックスや、身体組織の回復を司る役目をしている。

 入江先生は論稿集の中で、各仙椎は、それぞれ特有の経脈に関係していると書かれている。(P.431)

 自分なりに仙骨治療について考えてみました。

① 仙骨全体の変位

仙骨は大きく分けて3つの変位が生じます。

・下方変位(仙骨が全体的に下がる)

下方変位

・回旋変位(仙骨全体が左右に回旋する)

回旋変位

・側屈変位(  〃  左右に傾く)

側屈変位

仙骨が変位すると、骨盤が下方に落ち、それに伴って腰が後ろに丸まって来ます。
 すると人体力学的に背中が丸まり、顎が前に出て来ます。

又、腹臥位で、膝を伸ばしたまま、片足ずつ自力で下腿を上げる動作がし難くなります。

 オステオパシーやカイロプラクティックでは、頭蓋骨と仙骨の間で脳脊髄液がリズミカルに循環していると考えていますので、そのバランスの崩れにより諸症状を起こすと考えます。

 各仙椎は、特有の経脈に関係しています。

第5仙椎は、腎経との関係が深い(論稿集P.431)ため、第5仙椎付近に問題があると、腎経に異常が出ます。

治療
仙骨が、5つの椎骨が癒合している事を考慮に入れて、第1仙椎から第5仙椎までを、各ブロックに分ける事にしました。縦は第1仙椎から第5仙椎まで、横は正中仙骨陵と外側仙骨陵の範囲で、八髎穴を左右に分けた縦5列、横4列の全20ブロックです。

仙骨分類図

 次に①~⑳番までをFTし、stの強いブロックに印を付けます。
先補後瀉の法則に従い、stの中で一番補が適するものに補の皮内鍼を入れる。

 次にstの中で、瀉の適するブロックに瀉の皮内鍼を入れる。
仙骨前面部には、4つの横走隆線があり、椎間板の形跡を残しています。

 八髎穴は、仙椎の上関節面と下関節面の間にあり、その仙骨孔から仙骨神経が出ています。この周辺で歪みが出ます。

 先程の補瀉の皮内鍼を数ヶ所に加えると、上仙か腰兪にstが強く現れます。
上仙と腰兪が、補か瀉かは決まっていないので、適宜FTで診断し施術します。

 仙骨全体がsmになると、刺入した皮内鍼の中で、stな箇所が出て来る時があります。
そこは矯正が終了したと考えて抜鍼します。

 仙骨の治療が上手く行くと、仙骨全体がsmになるだけでなく、仙骨に手を触れると、水を得た魚の尻尾のような動きをします。次に各脊椎をFTして、棘突起間にstがあった場合は、そこに補か瀉の皮内鍼を入れます。大事な事として、上下の補瀉の場合は、体が敏感なため、皮内鍼は1時間以内で外すようにして下さい。

最後に

東洋医学の基本概念の陰陽を調節する作用が奇経治療にはあります。
 又、仙骨には、五臓六腑を調整する機能が備わっているように思います。
仙骨を繰り返し治療していて、第2仙椎周辺(仙腸関節も含め)は脾経と胃経に関係しているように思います。今後、他の経脈との関係を調べて行きたいと思います。

 今回は、五行説、臓腑説、三陰三陽などの理論に頼ることなく、治療を組み立ててみました。

古典を追試する事は大切です。FTをして行くと、古典で述べられている事が正しい事が実感できます。それと同時に、FTを使って新しいアイデアで挑戦して行く事が、伝統を守っていく事になると思いました。

目に見えない気という世界を毎日追いかける。決して効率的とは言えない、もしかしたら無駄な時間を費やしていると思ってしまう時があるかも知れません。それでも積み重ねて行けば、無意味に思えた事が、やがて底力となります。技術が上がって来たら、自分に必要な事に集中し、残りは削ぎ落します。

ピラミッドに例えると、無駄と思って続けて来た事こそ底辺の大きな安定したものになります。無駄と思える事に意味を見出し継続して行く強い気持ちが大切だと思います。

東洋医学を学べる事に感謝しながら・・・。

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