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ストレイン&カウンターストレインの圧痛点を使った鍉鍼治療

ストレイン&カウンターストレインの圧痛点を使った鍉鍼治療

FT塾講師 神林 一隆

 これは、オステオパシーの手技の一つで、それを参考にした症例です。
この春に右膝の痛みを感じたが、日常に追われて何のケアもせず過ごしてきました。

 ある朝起床しようとベッドから立ち上がった瞬間に右膝内側に鋭い痛みが走り、ガクッと力が抜けてしまいました。それでも通常通り仕事をし、帰りの駅で階段を上ろうとした時に膝が曲がらず、重心を乗せようとすると痛みのため思わず手を添えてしまう状態。

 帰宅後両膝を見比べると、膝蓋骨の内側部に腫脹、熱感があります。ここまで放っておいた自分に呆れつつも、自己治療をすることにしました。

脈診では右腎がメイン。
太谿と左小腸経はstの強かった陽谷を選穴し本治法を行ない、患部のstなところに皮内鍼。
熱感があったので冷湿布を施しました。

翌朝は痛みが軽減しましたが、帰宅時には前と同じ状態になり、また同じ治療を繰り返し5日程経過しました。

ペインスケールで最初の痛みを10とすると3になったのですが、草刈りをした夜からまた痛みがほぼ元に戻ってしまいました。今回は、これ以上長引くと肉体のみならず精神的にも影響すると思い、本気?で膝治療に取り組むことにしました。

治療法は、現在 臨床でも使っている ローレンスH・ジョーンズ(オステオパシーの医師)の考案されたストレイン&カウンターストレインで扱われる圧痛点を参考にさせていただきました。

ストレイン&カウンターストレインとは、機能障害を起こしている筋紡錘を有している筋肉を、その拮抗筋を緩やかに伸張させ、機能障害を生じている筋肉を収縮させることにより、機能障害を取り除くテクニックです。

指標となる 圧痛点を見つけ出し、その圧痛が軽減するようなポジションに関節を導き、90秒保持し、ゆっくり中間位(屈曲と伸展の中間)に戻します。

痛みに関係する 固有受容器の反射が緩むのに90秒かかります。

鍼灸で行なう、いわゆる阿是穴治療では、圧痛点や硬結を病変の治療点として施術をしますが、ストレイン&カウンターストレインは、あくまで病変の本質というのではなく、治療に導く為の関節の位置をモニターする指標であることに違いがあります。
    
【治療】    

ストレイン&カウンターストレインの圧痛点
          
 図で示したのが、ストレイン&カウンターストレインの圧痛点を示した図です。私の場合は 内側半月板の圧痛点に強く反応します。

患部はstで、数値化すると-6になります。

今回 、小里(こざと)式鍉鍼(ていしん)を用いる事にしました。よりシャープな圧痛点を探し出せると思ったからです。

左手で、鍉鍼を持ち、鍉鍼の先で深さと角度で、よりstな点を探します。

鍉鍼で圧迫された反射点は、鋭い痛みを感じます。ここから膝を約40度屈曲させて、右手で下腿部を内旋させて行きました。少し圧痛が軽減したので、次に鍉鍼を支点として下腿を僅かに内転させると圧痛が1/3 程になりました。

約90秒保持し、ゆっくり中間位に戻してから鍉鍼を患部から外しました。

st は -6から-1に改善していました。軽い屈伸運動が可能になりました。
2日に1回、内側半月板を圧痛点として治療しました。

症状はかなり改善し、内側半月板のstも、-1か-2になりました。自己治療なので実験も兼ねて、次に圧痛のある場所を探しました。 内側膝蓋骨の圧痛点に圧痛と-2のstがありました。

小里式鍉鍼で、より圧痛とstの強い場所、角度、深さを探し、今度は膝蓋骨の外側から内側に向けて 約2㎏ の圧迫を加えました。

膝蓋骨の外側から内側に向けて

約90秒間保持し、ゆっくりと圧迫を緩めました。
施術後は内側膝蓋骨の反応はsmになりました。
現在は ADL(日常生活動作)に問題なく過ごせています。

この自己治療を経験してから、患者さんの第4中手指節関節の機能障害を治療しました。近位指節間関節で、指が引っかかり、自発的に伸展できないため患者さんは通常、腱鞘炎やバネ指と言われて来院します。

施術者は中手指節関節機能障害の反応点を小里式鍉鍼で圧迫しながら、角度、深さの一番stな場所で圧痛の強い場所を探し出します。

中手指節関節機能障害の反応点

次に施術者は中手指節関節を圧痛が軽減するまで屈曲させていきます。

屈曲をさせながら掌側骨間筋に向かって側方に押して行くと圧痛が軽減していきました。そのまま 90秒間 保持して、ゆっくり中間位に戻してから鍉鍼を外しました。

上記の患者さんの圧痛部が-6であったのが、治療後は-1に変化していました。
今までの自分が施してきた方法より早い改善が見られました。

第1手根中手関節機能障害の治療

第1手根中手関節機能障害の治療

良く手を使われる仕事の方に多い疾患です。
物をつかむ時に親指が痛み、握力が入り難いと訴えます。圧痛点は小指球側から母指球側へずらすように探っていくと比較的強い圧痛があります。

大抵の場合、硬く凝っています。

術者は圧痛点に鍉鍼を当てFTします。
この時は-4のstでした。

母指を手掌側に大きく回旋させるようにします。
わずかに屈曲を加えると、鍉鍼を当てた圧痛は緩みます。
患者さんは時折り、暖かいとか気持ちいいと言うこともあります。

90秒その状態を続けて、ゆっくり母指を中間位に戻し鍉鍼を外します。
stはsmになります。
痛みの軽減は患者さんにもすぐ分かってもらえます。

ただ毎日使用する指なので、定期的に治療が必要です。
圧痛点が1/3以下になり、凝りが小さくなると再発はし難いようです。

今回の治療を繰り返している中で、小里式鍉鍼を患部に当てていると、重くなったり軽くなったりすることがありました。大抵の場合、鍉鍼が軽くなった時は約90秒で圧痛が軽減するし、鍉鍼の重さが軽くなるので分かりやすく、FTのような筋反射を利用した方法と組み合わせやすい と感じました。

【 各画像は圧痛点に小里式鍉鍼を当てているところです 】

PS
5月の臨床科で、今回のストレイン&カウンターストレインの圧痛点を使った鍉鍼治療の講義をしました。
当日は特に疾患を持った先生方がいなかったので病変を想定して練習しました。
FTの臨床経験が豊富な先生ばかりなので、3人一組になってもらい、ストレイン&カウンターストレインの膝の圧痛点の中で一番stな箇所に鍉鍼を置き、験者、被験者そして3人目の先生がFTをして鍉鍼が一番 smになるポジションを探し出す練習をしました。 実際現場で術者が鍉鍼を持ち、ポジションをを調整しながらFTをするのは難しいので、これも良い経験になりました。先生方には細かい関節のポジションの指導はしなかったのですが、FTで 治療角度やポジションを決定してsmになった時は、ローレンスHジョーンズ氏が指示された写真のポジションに近づいていたのが何より興味深かったです。 ストレイン&カウンターストレインの熟練者程の結果は出せなくても有効な方法だと感じました。

〈参考文献〉 「ストレイン&カウンターストレイン」ローレンスHジョーンズ著
日本オステオパシー学会 (株)スカイイースト

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